うすた京介とユカイな仲間たち


ご存知の方も多いかもしれないが、うすた京介という漫画家がいる。『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』で華々しくデビューを飾り*1一躍ギャグ漫画界において一定の地位を築き上げたその人である。『マサルさん』は時にシュールな作風と称されることもあるが、その真偽はさておき、基本的には一応の主人公である花中島マサルの常軌を逸した変態ぶり(本人はいたって真面目のつもり)とフーミンのツッコミによって成り立っている作品である。通常のギャグ漫画、いわゆる正統派ともいえる『稲中卓球部』などとは違い、どこか視点のズレたボケが笑いを誘う。またマサルを筆頭に、全体として登場人物がとても好意的で作品全体にアットホームな雰囲気が漂っているのも成功した要因の一つだろう。



次作の『武士沢レシーブ』も一応その路線は継承したが、割合シリアスな場面が増え、またネタも『マサルさん』の時ほど切れていなかったため、作品として中途半端なものとなってしまいあえなく打ち切りとなってしまった。



今ジャンプで連載されている『ピューと吹く!ジャガー』はどれほど人気があるのかはよくわからないが、とりあえず自信初の10巻という大台に乗せまずまず安定している。私個人的にはこの『ジャガー』でうすた京介は成熟期に入ったと見ている。従来の独特なギャグに加えて心情の機微、また微妙な間というものを今まで以上にうまく描けるようになった。そこの面白さが唯一の弱点ともいえるオチの弱さを何とかカバーしているのが現状だ。



ではなぜ今まで以上に全体としてうまく描けるようになったのか。毎話7ページというページ数の少なさによる循環の良さはもちろんのこと、まず早期にキャラクターを確立できたのが大きい。ボケとツッコミの関係であるジャガーピヨ彦は基本として、普通の紅一点ではなくややマニアックな人間である高菜がいること(もはや紅一点たりえなかったので後にサヤカが加わったが)、メソ的なポジションとしてハミーがいることなど数え上げればキリがないが、何よりハマー、ポギーといった”ダメ人間”が複数存在するのが大きい。特に「いじられ+ダメ人間」、二大特徴を兼ね備えたハマーは裏の主人公と言っても過言ではない。ハマーのダメっぷりは失笑ともおぼつかない笑いを誘う(内輪的ではあるが)。もしかしたら『ジャガー』人気の要因は、自分より”ダメ人間”がいることに読者がどこか親近感と安心感をおぼえるところにあるかもしれない。

*1:正確には違い、デビュー作であるショートギャグは『チクサクコール』に収められている