『人間そっくり』(安部公房 新潮文庫、1976)


12月10日公開の映画「ザスーラ」の前売り券に火星の土地1エーカーの購入証明書がついてくる――というなんとも夢のような話がある。


それに比してこちらの『人間そっくり』には―ユーモアはあるが―欠片ほどの夢も見当たらない。自称”火星人”がある男の家に火星―地球間貿易協定の日本政府代理人の依頼にやってくる。この”火星人”は果たして本当に火星人なのか、はたまたただの気違いなのかはわからないが嘘八百で塗り固められた(嘘かどうかも曖昧なんだけど)その”火星人”の言説に男―これまた冴えない中年男なのだが―は翻弄され、徐々に何が現実なのか認識できなくなりついには精神を崩壊させていく。


これでちょうど3回この小説を読んだことになる。普段小説を何度も読みなおすような人間ではないんだけどこの『人間そっくり』だけは別で、一応主人公である男の精神崩壊の過程がとても面白いので数年に一度突然読み返したくなる。今回のきっかけはさきの『ザスーラ』だ。


先日結婚式で実家に帰ったとき親にこの本について軽く話してみた。
そしたら
暗いなー
と言われた。
そして
もっと明るい本を読もうよ
とも言われた。


明るい本って何よ?


夜、親新聞の書籍番付指して曰く
「これとか?




国家の品格藤原正彦 新潮新書、2005)」*1

*1:ちなみに藤原正彦さんは朝日か読売かでコラムを連載してて、面白い文章を書くのでけっこう気になっていた人。『国家の品格』はたまたま立ち読みしてたんだけどあまり面白いとは感じませんでした。