『経済ってそういうことだったのか会議』

(佐藤雅彦竹中平蔵 日本経済新聞社 2000)


対話形式で読みやすそうだからすぐに読み終わるか、と思っていたらページにして350以上あり意外にきつかった。全部で9章(+終章)あり、それぞれ経済に関する身近な質問を佐藤さんが竹中さんにぶつけるという形で進んだ。この中でもボクは第3章の「払うのか 取られるのか」(税金の話)と第9章の「人間とは『労働力』なのか」(労働と失業)が読んでて非常に興味が持てた。



税金の話では竹中さんの「でも逆に働くのが楽しくなる税金のとられ方だってあるはずですよね」という言葉がすごく印象的で、税金ひとつでここまでたくさんのものに影響を与えるという考え方が示されていた第3章はボクにはちょっとした衝撃だった。



労働の話では労働そのものというよりは小見出しになっている『経済学が役に立たないと言われる理由』が特に面白かった。



そもそもボクが経済に関心を持つようになったのは高校2年の時の政治経済のF先生の影響だ。公立高校だったせいか、どの先生も授業に対するやる気が今ひとつだった中(当然生徒も全くやる気なし)そのF先生の授業だけは非常に魅力的だった。毎回新聞の記事などを持ってきては時事的な話から始め生徒の関心を引き、難しい話も分かり易く教えてくれた。「不良債権」の意味もその授業で初めて知った。またどんなささいな質問にも懇切丁寧に答えてくれるため、ボクもいつの間にか授業にのめりこむようになっていた。今までボクが一番熱意を持って受けた授業はあの授業だったと今でも断言できる



その授業で完全に経済にはまったボクは岩波新書の「ケインズ」なんかも読んでみたり(難しくて挫折しましたが)向学心に燃えていた。しかし先輩や友達に「経済は机上の空論」、「経済学そのものが行き詰っている」とか言われているうちに「経済は意味のない学問なのかな」と思うようになり、いつの間にかボクは「無難に法学部かな」と思うようになっていました。(ちなみにその先輩と友達は二人とも現役で東大に行ったわけですが‥。しかも一人は経済だし!そんなもんよ世の中)



閑話休題、特に9章の『経済学が役に立たないと言われる理由』には経済学の今後の新たな展望なんかも示されていて経済学にたいした望みを持っていなかったボクにも少しの希望をもたらしてくれました。最後に9章にある竹中さんのこの言葉で締めたいと思います。

竹中「ある世界的な経済学者が面白いことを言っているんですよ。よく『経済学が役に立たない』というような批判は耳にするけど、『政治学が役に立たない』とか、『社会学が役に立たない』という議論は聞いたことないと。何で経済学だけ役に立たないと言われるのか…。何でそういう議論が出てくるのか――、理由があるんです。経済学はすごく優れた学問だという、過剰な期待があったからなんですよ。」




私は商学部です。