『確率・統計であばくギャンブルのからくり』(谷岡一郎 ブルーバックス、2001)


何より関心のある分野を読むことで「ブルーバックス=つまらない」が瓦解できたのが良かったです。競馬、ブラックジャック、パチンコ、totoといった身近なギャンブルのからくりを明らかにすることで読者に必勝法を伝授してやろう――というような「いかにも」な本ではもちろんありません(まあブルーバックスだし)。



日本の公営ギャンブルがいかに「ぼったくり」であるかを知らされたし、普通にやる限りギャンブルにおいて「必」勝法なんか存在しないことも改めて再認識させられました。ただそれ以上に驚いたのが必勝法はないけど、限りなく期待値を上げる方法がいくつも存在するということです。例えば競馬においては数学的には大穴狙いでいくのが実は目標達成への近道であり、またブラックジャックにおいては基本戦略テーブルとカウンティングを利用すれば期待値を100〜105まで上げることが可能であるということ、などなど(ただしこれは相応の訓練が必要みたいだし、実践するつもりはないけど)。



こうした事例を浅く広く扱うことで、多変量解析(重回帰分析含む?)のさわりに軽く触れることができたのも嬉しかったです。最後はギャンブル、というよりも"ランダム"を理解することで(まだ理解してませんが)社会でも生き残れるよ、といった大ざっぱな終わり方でしたが妙な説得力がありました。物事を最も客観的に見るには"ランダム"の理解であり、つまるところその理解は人生において時宜を見逃さない訓練でもあるんだなーと。



余談ですが、"ランダム"を理解したうえでの冷静沈着さは荒木飛呂彦の『ジョジョ』に通じるものがあると思います。全部読んだわけじゃないけど、あの漫画はそういった男の子がよく憧れる要素がすべて詰まった漫画で、またそういう微妙な状況をうまく描ききることで一連の作品のテーマである"人間賛歌"につながっているのではないでしょうか。